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2017年2月11日 (土)

<市民ランナー>マラソン大会出場 ベストな頻度は

毎日新聞 2/11(土) 10:00配信

 いよいよ今年の東京マラソンが目前に迫ってきました。その1週間前の京都マラソンや4月の長野マラソンなど、前後にある他の大会にエントリーしたランナーもたくさんいるでしょう。市民ランナーは、どれくらいの頻度で大会に出るのがベストか。多くのマラソン大会でドクターランナーを務めるよこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニックの奥井識仁院長に聞きました。

 ◇フルマラソンの疲労は1カ月で解消と言われるが…

 フルマラソンの疲労は1カ月で取れる、などと言われます。それを証明する科学論文はありませんが、ランナーの診察をしているとおおむねその通りだと感じられます。しかしそれはあくまで「ランニングができる」というレベルです。力のすべてを出してフルマラソンを走った人が、次に再び全力で走れるのは3カ月後、というのが私の実感です。

 その「実感」を科学的に検証してみました。私自身が毎月の月間走行距離を200キロと定めて、定期的にマラソン大会に参加し、その間に性ホルモンであるテストステロンの分泌量を測定します。具体的には2010~13年にフルマラソン、トライアスロンなどのさまざまな大会に参加しつつ、継続的に血液中の遊離テストステロン値を測定、記録しました。毎月出場した期間もあれば、ひと月、あるいはふた月の休養月を入れた期間もありました。

 結果、大会に参加すると一時的にテストステロン値は上昇し、その後に次第に下がっていきました。テストステロン値の低下期間に再度大会に出ると、テストステロン値は下がったままで上昇しませんでした。休養期間の長さを変えながら、いろいろなパターンで検証、解析した結果を(1)毎月大会に出た場合(2)間に休養月を1カ月入れて=およそ2カ月おきに大会に出た場合(3)休養月を2カ月入れて=およそ3カ月おきに大会に出た場合--の3パターンに分類して、グラフに表してみます。

 グラフの青い曲線はテストステロンの平均値、黒い曲線はテストステロンの変化から得られる近似式です。縦軸は血液中の遊離テストステロン値(pg/mL)で、正常値は4.7~21.6とされています。男性更年期(医学的には「加齢性腺機能低下症」と言います)で治療を開始すべき目安とされる8.5pg/mLのラインを太い線で示しています。横軸は時間で、曲線の左端から右端までで3カ月間に相当し、2本ずつある青い矢印は大会に参加した時期を指します。毎月出た場合のテストステロン値は右肩下がりのままですが、2カ月おきではやや上昇に転じ、3カ月おきでやっと低下部分を回復できています。この研究は2014年日本Men’s Health医学会で発表し、会長賞を受賞しました。

 ◇低テストステロンがもたらすリスク

 テストステロンは男性ホルモンと呼ばれますが、男性にも女性にも分泌されます。成人では性行動や性機能の面でも重要ですが、筋肉の量と強度を保つ機能、そして血を作る作用を持っています。また精神にも関係していて、集中力の維持、リスクの回避などの高次脳機能にかかわっています。

 次にテストステロン値が低いままだと起きることを最新の学術論文からまとめてみました。

(1)若い男性は性機能が低下する

 ポーランドの医学誌「Endokrynologia Polska」に14年に投稿された論文では、年齢20~49歳の男性136例の健康状態を調べた結果、テストステロン値が低下すると性機能が著しく低下すると報告されています。

(2)心臓など血管系の病気が増える

 「Frontiers of Hormone Research」という医学誌に14年に掲載された総説によると、心血管系の病気を持っている男性には、テストステロンの欠乏が高率に発見されます。さらに死亡率の上昇とも関連していることが分かっているとしています。

(3)血管の炎症が続き、動脈硬化が出現しやすい

 「Endocrine research」という雑誌に掲載された論文では、マウスを使った実験でテストステロン値の低い状態が血管に与える影響を調べています。動脈硬化は血管に炎症が起きることで生じますが、その炎症をテストステロンが抑えていると考えられる、と報告しています。

 ◇テストステロン値が低い時期の大会エントリーは危険

 これらのことから言えるのは、大会に参加し血管や心臓に負担をかけた後、テストステロン値の低い状態が続くと、血管の炎症がなかなか改善せず、心臓へのリスクも増すということです。そんな状態で、次の大会に出たらけがは頻発するでしょうし、心臓の突発的な病気だって起こりえます。

 テストステロンの分泌が回復したかどうかの目安は、性機能です。性機能が低下したときは、次の大会のエントリーは避けるべきだと言えるでしょう。初心者ランナーが1シーズンに2~3大会出場してみたいと思うなら、休養期間を少なくとも2カ月は確保するよう勧めます。

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